Why ひとびと ?

いちごと、創造性あふれる仕事に魅せられて

Why ひとびと ? いちご 大宮市 果物 農業

2023.03.22

PROFILE

彦田 真吾・結衣

hikofarm

IT商社とメーカーから転向し、3年の準備期間を経て2021年茨城県常陸大宮市でいちご農園hiko farmをスタートする。手がけるいちごは高い品質を誇り、開業初年度にして茨城県いちごグランプリで金賞を受賞。前職の経験や、持ち前のものづくりに対する情熱を活かし、独自の世界観で農園と直売所を営んでいる。

2024年🍓hiko farmさんの新たな取組み

夏季と秋季で、いちご以外に「オクラ」と「トレビス(イタリア野菜)」の有機栽培に取り組んでいます!いちごの栽培面積を拡大しました🍓



羊さんたちが育ってくれていて、うまくいけば今年の秋に結婚してもらい、来年の春に子羊が産まれるかもしれません。
子羊が産まれたら、お母さん羊からシープミルク(羊乳)を少し分けてもらって、羊乳を使用した商品開発を検討できたらと思っています。
羊さんの健康第一に考えていますので、ゆるーく、のんびり取り組んでいければなと思っています。

 ぜひ、皆さんとくべつな旬のいちごをご賞味、お楽しみください♪

 

「大切にいちごたちの成長を見守って、きれいに見えるようにパッキングをして、お届けする。そのひとつひとつが好きだし、『おいしいわ』と言っていただける喜びを日々感じて、この仕事が楽しくて仕方ないんです」。そう熱弁してくれたのは、hikofarm(茨城県常陸大宮市)の彦田 結衣さん。夫の真吾さんとともに、サラリーマン生活からいちご農家に転向しました。そのきっかけは、真吾さんの闘病体験と、とあるいちご農家との出会いから。開業2年目で、Why Juice ? とのお付き合いも始まったばかりのおふたりに、その営みについて聞いてみました。

かけがえのない人生の時間を、家族と過ごしたい

もともと心臓に持病があったという真吾さん。いよいよ手術の必要性を迫られたとき、結衣さんのお腹には新しい命が宿っていました。

「成功率が高い手術でしたが、心臓なので、万が一何かあった時のことを結衣と話し合いました。自分達にとって何が幸せなのかを考えさせられたんです」。そして「一緒に過ごせることが幸せ」という結論に至ったおふたり。真吾さんはそれまで出張で家を空けがちな生活をしていましたが、結衣さんとも子どもとも、時間を共に過ごせる暮らしをしたいと考えるようになります。


「ちょうどそんな時、仕事を通じて農家さんに会う機会が増えていって」。ICチップを取り扱う商社で、人工知能やセンサー技術など、IT技術を農業に活用していくチームに配属された真吾さん。それまで畑には縁がありませんでしたが、数々の農家を訪れるうちに、農業を営む人生のあり方に惹かれていきました。


そのプロジェクトを通じて出会ったのが、鉾田市のとあるいちご農家。大手青果ブランドにいちごを卸す、いちごの匠だ。「そこでいただいたいちごが、本当においしくて」。そのいちごに感銘を受けたことも、就農を考える彦田さんたちの背中を押しました。

やがてシステム導入が終わっても、週末農家の元へ通って栽培や出荷を手伝うように。その後、就農を視野に入れて栽培方法や経営を学ぶ目的でその農家で研修を受けながら土地を探し、同県内に自身の畑を構えることになります。研修先で学んだいちごの栽培や選果の方法、そして経営のノウハウは今のhiko farmの礎になっているそうです。

手術を無事終えた彦田夫妻はいよいよ決意を固め、出産を経て退職し、移住、研修と、3年ほどの準備期間を経てhiko farmを開業します。

  

地域に育てられてきた畑と、師匠の技術を受け継いで

こうしていちご農園を開業するに至った彦田夫妻。最も苦労したのは農地の確保でした。いろいろな方に相談し続け、茨城県農林進行公社の紹介から市役所のサポートを通じてなんとか借りることができましたが、そこまで要した年月は研修期間も含めて3年。新規就農者が計画的に土地を見つけていく難しさを感じたといいます。

hiko farmの畑があるのは、野菜の名産地である常陸大宮市三美(みよし)と呼ばれる地域。畑は高台の平坦な場所に位置し、日当たりが良く、寒暖差のあるいちごに適した環境です。さらに、黒ボク土で構成される土壌は、長年牛糞堆肥で良質な土づくりがなされてきたそうで、これが良いいちご作りに生きています。今でも、畑が長年お付き合いしてきた畜産農家から堆肥を譲り受けています。



hiko farmで栽培するいちご(とちおとめ)の収穫は、11月下旬から翌年の5月いっぱいにかけて。特に12月下旬から旬のピークを迎え、厳寒期が最もおいしいといいます。「寒いといちごがゆっくり育つんです。じっくり育つ分、栄養やおいしさがゆっくり詰まっていくんです」。約半年にわたる収穫期間の間、いちごはまんべんなく実るわけではなく一定の波があるため、それに合わせて肥料をいつどれくらいやるかなどの計画を立てます。近年は年によっても天候が変わるので、生育状況を見ながら柔軟に対応します。

さらに、研修をした畑とは同県内であっても地理的な状況などが異なるため、都度チューニングが必要になるといいます。例えば、畑にひく水源となる川の水温が下がる影響で土中が冷えすぎてしまうのを、糖蜜を利用して微生物を活性化することで土中温度を上げたりしているそうです。

5月に収穫が終わると、6月から来シーズンに向けて土づくりと苗づくりを行なっていきます。土づくりとは、先述の牛糞堆肥や微生物資材を畑に混ぜ込みビニールえ密閉し、太陽光を浴びせることで、土中温度を上げて消毒と微生物分解を促すというもの。「土づくりと苗づくりと両方やっていて、どちらかが失敗すると次のシーズンに栽培ができなくなってしまうので、気を抜くことができません」。

長年土づくりを続けてきた畑、そして研修先の師匠の技術を継承し、リソースや知恵をフル活用しながら、自身の観察眼と柔軟な対応力でいちごと向き合っていく。そうすることで、初年度は想定以上の成果を出すことができました。

 

農家の枠にとらわれず、他業種の人とクリエイティブに展開していきたい

1年目は人員を雇わず、出荷できる品質のいちごを育てることを目標に、夫婦2人でやり切ると決めた真吾さんと結衣さん。「僕らの技術不足でいちごが作れないリスクも考えて、2人でやるには少し多いくらいの面積で栽培しました。その結果、無事ちゃんとしたいちごを作ることができて、出荷や販売が追いつかないくらいでした。多くできてしまったので、夜な夜な仕事をしたり、思い出深いのは朝から翌朝の4時まで働き詰めになってしまったこと。大変でしたが、とにかく初のシーズンをどうにか走り抜けることはできました」。

そして、茨城県のいちごのグランプリで金賞を受賞します。それが対外的にもいいアピールになったと話します。2年目となる現在は、スタッフを増員し、面積も拡張していちご作りに励んでいます。「僕たちは元々旅が好きなので、ゆくゆくは畑をスタッフみんなで運営しながら色々なところへ行きたいと思っています。そうした体験が、また戻った時の仕事に生きると考えているんです」。

そんなお2人に、今のお仕事のやりがいについて聞いてみました。「とにかく毎日楽しいです。体も動かすし、頭も使うし……。そして何よりも、自分を表現していける環境だということが一番良いなと感じています。直売所なんかは、完全に妻の世界観なんですけど」と真吾さん。「自分たちの世界観を表現できる場所があって、それを表現するために好きなものを集めて、それを紹介して……」。現在のお仕事をいちごを育てる農家であるのみにとどまらず、さらに広義に捉えているそうです。

「羊と山羊も飼っているので、将来的には羊を増やして乳製品も作り、いちごと一緒になにか作れないかなと考えていたり……。自分がいる環境にいちごの畑があって、羊と山羊がのんびり草を食べているという光景があるだけで幸せです。ここにいられること自体がモチベーションになります」。


冒頭でも現在のお仕事の創造性と楽しみについて熱弁してくれた結衣さんは、さらにこう話します。「日々、自分たちの世界を表現していきたい、と思いながらいちご農家をやっているのですが、私たち個人の力だけではどうしてもできることに限界があるなと思うんです。そこで、例えばデザインやアートなど、あらゆる方向のプロフェッショナルな方々と繋がって、みんなが持つ魅力やエネルギーを掛け合わせて、一緒に楽しい世界観を創っていけたらいいなと考えているんです」。「そういう意味で、クリエイティブに精通したWhy Juice?さんにお声掛けいただいたのは、とても嬉しい出来事でした」と真吾さん。「デザインやアートといった、視覚的のみならず五感を使った体験のクリエイションに携わっているプロの方々と色々取り組んでいきたいです。そうすることでこの世界を良くしていくことに貢献できたら、それぞれのお仕事の面白さもさらに増していくと思います」。

農家という営みを通じたクリエイションの可能性を語ってくれた彦田夫妻。これからの活動にも、目が離せません。

 

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