Why ひとびと ?

微生物の力を借りた、おいしいレモンづくり

Why ひとびと ?

2024.01.27

PROFILE

菅 秀和

citrusfarmsたてみち屋

愛媛県今治市大三島出身。会計専門学校卒業後、広島にて水産物の市場や大手スーパーマーケットの精肉部門への勤務、飲食チェーンのマネージャー、有機栽培を行う農場の営業などを経て、柑橘の観光農園を任されたことをきっかけに広島県尾道市瀬戸田町の生口島へ移住・独立開業。レモンのおいしさを広めるべく、全国でワークショップ等を行う。

citrusfarmsたてみち屋 菅 秀和さんのこと

「おいしいレモンは、生物の多様性が生む自然の働きによって作られます」。

そう話すのは、瀬戸内海に浮かぶ生口島(いくちじま)でcitrusfarmsたてみち屋(以下たてみち屋)を営む菅 秀和さん。
「食べるレモン」と名付けられたたてみち屋のレモンは、全国各地の食のプロが太鼓判を押します。

その味と効能から、Why Juice?にとっても欠かせない食材の一つです。人気を集める秘訣のひとつは、糖度の追求。菅さんは世のレモンブームに先駆けて、高糖度のレモン栽培に取り組みその普及に奔走したひとりです。

レモンのことと、農園のこれまでの歩みについて、お話を伺ってみました。

レモンをみかんの隣に並べるには?

「僕がレモン農園を始めた10年前、レモンは酸っぱいだけで、“安心安全”といった謳い文句を強みに、ネギや生姜と並べられるだけでした」。
スーパーマーケットでは果物が旬を迎えると入り口に食べ頃を迎える実が並べられます。
「みかんはそこに並ぶのに、何故レモンは並ばないんだ?」と、当時は当たり前とされていたことに、菅さんは疑問を抱いたといいます。

レモンは果物として認識されないのか。
「農家や農業組合に聞いて回っても、レモンは酸っぱく、香りが良ければOKという回答で、旬の時期すら定められていませんでした。
誰もやっていないからこそ、レモンを果物として世に送り出すことに意味があると思いました」。

そこで着目したのが「糖度」でした。すいかが食べごろになると、糖度を記したプレートを添えるように、レモンも甘さを訴求したい。果物だから甘くなるはずだ、と、まずは糖度の分析から始めました。
「レモンが青くグリーンレモンと呼ばれる段階から糖度の変化を調べていきました。最初は7〜9度。
そこから上がっていって、2〜3月ごろに10度を超えてピークを迎えます。個体差はあるけれど、最高13度(※)のものも
ありました。
そこで、たてみち屋では一番糖度が高くなる2〜3月を旬と定めることにしたのです」。

(※農林水産省の調査によれば、一般的にオレンジの平均糖度は10.3%程度、みかんは12.1%程度と言われています。)

土壌を科学的に検証して、自然本来のおいしさを引き出す

「当時、瀬戸田の観光振興にも動きがあって、地域の名物にレモンが選ばれたんです。
レモンは肉や魚の代わりにはならないけれど、それらを美味しくする。お菓子やスイーツにも活用できる、汎用性の良い素材だと。
そこで僕も、食べてもおいしい果物で、旬があるということを発信してきました」。 

レモンは、収穫時期による変化を楽しめる果物でもあります。
10〜11月下旬から収穫する実はまだ青く、グリーンレモンと呼ばれますが、糖度8度前後で、果皮が厚く果肉・果汁は少なめ。
酸味やキリッとしたスパイシーな香りが特徴です。
12月上旬から1月下旬ごろは葉緑素である緑色が光合成により分解されて黄緑色に変わっていきます。
2月になると糖度が10度前後まで上がり、果肉・果汁が増えて果皮が薄くなり、酸味や香りがマイルドになってコクが増していきます。

レモンのおいしさについて、菅さんの考えを伺ってみました。
「そもそも果物も野菜も、おいしくなるようにできているんです。
邪魔する成分が多くなると、おいしくなくなる。だから余計なことをしないのが一番なんです。
僕自身、農家としての経験も長くないし、研修のようなこともきちんとやっていない。それでも、人間が健康になるためにはどうすればいいかネットにたくさん書いているように、植物もそこに置き換えて考えるようになりました」。

菅さんは、農園2年目から畑の土壌の分析を続けています。
「レモンの栽培を考えるとき、それを構成するものは元々ある植物のDNA、そして光合成、土から吸収する養分や水分の量とバランス。
それを僕以外の人とも共有していくのにデータは有効だと考えて、土壌の計測を始めました。
それで、なぜこの成分は前より減るんだろう? 昨年と比べて今年はなぜこうなる? と検証を重ねて」。
データをもとに分析と試行錯誤を重ね、レモンの品質を上げてきたそうです。
「おかげで、長年農業をやられている方が経験で培っていく“勘”のようなものの一部を、比較的短時間で習得できたように思います。
今は、年に2回を中心に、畑の情報を取りたい時に実施しています」。 

土壌、つまり微生物の働きの力が最大限生きるように促すことで、おいしいレモンを作っているのです。

「レモンを美味しく食べるには、鮮度を下げないことが大切です。
水分率が下がると風味が飛んでしまうので、水洗いして、ラップに包むなどして冷蔵庫で保管し、乾燥を防ぎましょう。
レモンのいただきかたは、今では色々と知られていますが、うちのWebサイトに載せている塩レモンもおすすめですよ」。
たてみち屋さんが掲げる「食べるレモン」の醍醐味を、ぜひ楽しんでみましょう。


“おいしい”は、“うれしい”。農業について、正しい理解を

「“おいしい”は、“うれしい”。僕自身もお客さんにおいしいと言っていただけるのはうれしいし、たとえば飲食店で使ってくださっているお客さんが、その先のお客さんに喜ばれ、常連ができました、なんて話を聞くと、それもうれしい。
そんな“うれしい”の連鎖をこれからも増やしていきたいです」。


おわりに

最後に、農業を営んで難しいと感じている点について伺い、レモンを手にする消費者やWhy Juice?へのメッセージをいただきました。
栽培方法についての認知について、その難しさに言及した上で、「いろいろな農法があります。正しいことを、正しく理解していきましょう。
レモンで言えば、ノーワックスかどうかをよく問われるのですが、日本では法律でワックス(=防カビ剤と呼ばれる薬品)を使ってはいけませんから、使っているわけがないんです」。

「農薬や肥料に関して言えば、使っていないから安全ということでもありません。農薬は殺虫、殺菌のため、肥料は栄養を補うために必要な場面があります。
化学肥料も、目的と需要に応じて作られているものです。食べ物に対する善悪や、マウントを取り合って商売するようなことがなくなっていけば良いのですが」。

土壌調査を重ねて科学的な知見を積んだからこそのコメントもいただきました。
そして、Why Juice ?を通じて、消費者の方々にもそうしたことが伝わっていってほしい、と話します。

「情報は少ない方がいい。おいしく、良い方法で伝わっていってくれたら」。
今後は、年間通して需要の高いレモンを、夏にも売ることができるような仕組みを検討中だそうです。

今後の菅さんのご活躍にも、目が離せません。

<参考資料>
https://www.sudatikaen.com/remon-saibai.htm(国産レモンの栽培状況)
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kazyu/h26_1/pdf/05_data3.pdf(P3果実の糖度と酸度)

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